北海道議会HOMEPAGE12月7日の本会議から、「日程第4 意見案第3号 意見案第3号 教科書検定基準の見直しに関する意見書」に関する部分をHTMLで再構成したものです。原文は会議録検索から平成12年第4回定例会,12月07日-06号のページを参照してください。

「教科書検定基準の見直しに関する意見書」の議事録

教科書検定基準の見直しに関する意見書」は、平成12年12月7日、平成12年第四回定例道議会に伊達忠一議員ほか6人から意見案第3号として提出され、以下の審議の結果、同日、原案どおり可決された。


意見案第3号 教科書検定基準の見直しに関する意見書

 二十一世紀を担う子供たちが、国を愛し、我が国の歴史への正しい認識を深め、国民としての自覚をはぐくんでいく上で、社会・歴史教科書の役割は、極めて重要である。

 しかしながら、現在使用されている検定教科書の記述の一部には、自虐的・反日的な記事があり、子供たちが自国の歴史に誇りを持つことのできない内容になっていることは、真に残念である。 このようなことになったのは、近隣諸国条項を初めとする教科書検定基準と、教育委員会の採択権の空洞化にあると言われている。 これからの国際社会に生きる子供たちが、世界の国々の人たちと親しみを持って接し、その国を尊重するには、自らの国に誇りを持つことが最も大切なことである。 よって、国においては、子供たちが、自国の歴史・伝統・文化に誇りを持ち、日本国への愛情をより一層強めるような社会・歴史教科書を作るため、教科書検定基準にある近隣諸国条項を削除するよう強く要望する。 右地方自治法第九十九条の規定により提出する。

 平成  年  月   日
北海道議会議長 湯佐 利夫
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、文部大臣 各通

「教科書検定基準の見直しに関する意見書」(日程第4 意見案第3号 )の質疑、反対討論、採決までの議事録

2000.12.07 平成12年第四回定例道議会
湯佐利夫議長

日程第四、意見案第三号を議題といたします。

お諮りいたします。本件については、提出者の説明を省略することにいたしたいと思います。これに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長

御異議なしと認めます。 よって、本件については、提出者の説明を省略することに決定いたしました。

議長

これより質疑に入ります。 質疑の通告がありますので、発言を許します。

新野至都子君。

新野至都子議員
(登壇・拍手)

教科書検定基準の見直しに関する意見書について質疑を行います。

意見書にある「二十一世紀を担う子供たちが、国を愛し、我が国の歴史への正しい認識を深め、国民としての自覚をはぐくんでいく上で、社会・歴史教科書の役割は、極めて重要である。」としており、同感です。しかし、見落としてならないことは、日本の過去の歴史にさかのぼってみるとき、戦前の教科書には、富国強兵の立場に立って、国民を総動員し、侵略戦争に突き進んだ歴史的経過があるのは明白な事実です。

現憲法はその侵略戦争の反省から制定され、そのもとで教育基本法が制定されたことは、国民の歴史認識の経緯を知る上で二十世紀の分岐点と言える重要な点だと考えるものです。

特に、社会・歴史教科書の役割は、歴史の真実と社会発展の正しい方向を学ぶ上でも重要であります。

旧西ドイツのワイツゼッカー元大統領は、「後になって、過去をかえたり、起こらなかったことにするわけにはいきません。過去に目を閉ざす者は、結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、また、そうした危険に陥りやすいのです」と言って、ドイツでは、第二次世界大戦でナチスドイツが行ってきた事実を高校生まで学校教科書の中で徹底して教えています。

提案者は、こうした歴史的事実、そして、同じ敗戦国であるドイツの歴史教育に対する姿勢をどう認識しておられるのでしょうか、伺います。

さらに、「現在使用されている検定教科書の記述の一部には、自虐的・反日的な記事があり、子供たちが自国の歴史に誇りを持つことのできない内容になっている」としておりますが、この教科書のどの部分、どの箇所を指して自虐的・反日的な記述というのか、お尋ねいたします。

(発言する者あり)

次に、中国を初め、アジア諸国に日本軍が侵略した事実認識についてですが、一九九五年八月十五日、自社さ連立内閣の首班、村山富市元首相が、以下のとおり表明いたしました。

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。

私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

と明確に述べました。

提案者は、当時首相としての村山富市氏の政府見解を否定するのですか。

国際社会に生きる未来の子供たちが世界の人々と交流するとき、歴史の真実を正しく教育されていないことは、国際友好の上からも大きな支障をもたらすことになります。近隣のアジア諸国の国際理解の見地から、近隣諸国条項を設けたことは当然ではないでしょうか、伺います。

自国の歴史、伝統、文化に対する誇りは正しい歴史認識に基づいてつくられるものです。そうしたことをせず、ある特定のイデオロギーに固執して歴史教科書をつくりかえることは許されません。

「教科書検定基準にある近隣諸国条項を削除するよう強く要望する。」というこの意見書は、アジア諸国の中で、南北朝鮮の歴史的融和の動きや、中国との関係が修復されるなどのアジアの和平の進展に逆行するものです。このことは、アジアの現実を全く見ようとしない惨めな孤立の道を歩む結果になるのではないでしょうか。(発言する者あり)

朝鮮半島をめぐって、南北首脳会議に続き、米朝関係でも前向きの進展が見られる中、三十五年に及ぶ朝鮮半島の植民地支配など、アジアにおける加害者としての歴史的事実と責任を明確にしてこそ、二十一世紀に向かって、アジア諸国と諸国民との友好と信頼を深め、広げていくことになるのではありませんか。明確な答弁を求めます。

(拍手)(発言する者あり)
議長

伊東良孝君。

伊東良孝議員
(登壇・拍手)(発言する者あり)

それでは、ただいまの日本共産党の新野至都子議員の質問にお答えをいたします。

今般の教科書検定基準の見直しに関する意見書について五問ほどいただきましたけれども、まず、第二次世界大戦前後に限っての歴史認識等についてであります。

そもそも歴史を認識しようとするときの姿勢として最も重要なことは、この事件や事象が起きた当時に立ち戻って、その背景や関係した人たちの考え、さらには、それを受けとめた者の思いなどに思いをはせ、考察することであります。決して、現在生きている者の生活や社会環境、価値観だけで過去の事柄を見てはならない、このように思うものであります。(発言する者あり)

過去の事象を、時間の流れを無視して現代から断片的に眺めて、それを批判したり非難することは簡単なことではありますが、それで歴史を認識したということにはなりませんし、そうした傲慢な態度は慎まなければなりません。(発言する者あり)

新野議員が例示された憲法や教育基本法の制定につきましても、当時に一たん立ち戻ってその事象を見るべきであり、日本が歴史上唯一独立国家としての位置を失った極めて異常な時期において、当時の人々の、もう戦争はこりごり、日本の再出発をという、そういった感情が背景にあったことは間違いないことでありましょう。

こうした歴史に対する真摯な姿勢に基づいた歴史観こそが重要であり、歴史教科書のあり方であろうと考えます。当時はこうした考え方もあったし、また別の考え方もあったということを客観的事実に基づいてバランスよく記述するべきであります。

(発言する者あり)

さらに、質問者は、ドイツの例を述べておられますが、私は、日本の子供たちが今使用している日本の教科書について議論をしているのでありまして、他国の教科書について述べる理由を持ち合わせてはおりませんけれども、もちろん、私自身も過去に目を閉ざす気も事実をねじ曲げる気も全くありませんし、ドイツと同様、我が国においても歴史的事実を正しく伝える必要がある、このように考えております。

また、自虐的・反日的な記事についてということでありますけれども、北海道の二十四の採択区のうち、二十一の採択区で採用されている教育出版社の中学歴史教科書の内容について見ますと、例えば、南京大虐殺については、この事件の犠牲者は二十万人と言われているが、中国では戦死者と合わせて三十万人以上としている。また、日本軍は、華北の抗日運動の根拠地などに対し、焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くすという三光作戦を行ったと教科書ではされておりますが、中国の政治的プロパガンダを検証することもなく、事実であったかのごとく繰り返しているわけであります。

特に、南京大虐殺については、当時の南京の人口は、民間人二十万人、防衛軍五万人とされており、日本軍が占領し、事件があったとしたわずか一カ月後に二十五万人の人口とされている文献も存在しているわけであり、二十万人から三十万人以上の虐殺があった、犠牲者が出たということは明確な根拠のないことと言われておるのであります。

また、慰安婦については、当時はそのような言葉のなかった従軍慰安婦という言葉を使用し、あたかも強制的に軍に送り出されたように書いており、個人補償を求める従軍慰安婦の主張をそのまま紹介し、日本たたきをする文書構成になっているのであります。果たして中学生にこの従軍慰安婦まで教える必要があるのかどうか、疑問であります。(発言する者あり)

さらに、「東南アジアの中学生が学ぶ日本の侵略」という項では、他国の教科書が紹介されており、その反日的なところばかりを意図的に取り上げ、一方的に日本が本当に悪かった、悪逆無道の限りを尽くしたように記載されているのでありますが、それまで長い間、欧米の植民地であった東南アジアの国々にとっては、解放されたとの一面もあり、例えば、インドネシアの教科書では、インドネシア人が日本を歓迎といった記述も実際にはあるのであります。(発言する者あり)

このほかにもたくさんの例がありますが、一々ここで取り上げる時間がございませんので、若干の例を申し上げましたけれども、これらの内容が自虐的・反日的な記述でないとは到底考えられないのであります。

また、このような教科書を読めば、日本人という民族は何とひどいのだろう、さらに、私のおじいちゃんやひいおじいちゃんもまたこのような悪いことをしてきたのだろうかということになり、日本民族や愛する家族に対する尊敬の念もわかないし、一体感も失われるのではないかと私は危惧するのであります。(発言する者あり)

さらに、村山首相の見解についてでありますが、我が国は、国策を誤り、戦争への道を歩んで、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたという村山首相の見解を私は否定するつもりは全くありません。

次に、近隣諸国条項についてでありますが、国際社会に生きる未来の子供たちが世界の人々と交流するとき、歴史の真実を正しく教育されていないことは、国際友好の上からも大きな支障をもたらすことになるという、この認識について、我が会派も同様に考えております。

今後とも、歴史の真実を正しく教育することができる教科書になるよう、私どもも努力をしてまいりたいと思っております。

さて、昭和五十七年、「侵略」を「進出」に書きかえたとする教科書の誤報事件が発生いたしました。その際、中国の申し入れを受けて、当時の官房長官が、我が国の教科書の記述についての韓国、中国などの批判に十分耳を傾け、政府の責任において是正することという談話を表明し、中国側に大きく譲歩をして、教科書検定基準に近隣諸国条項なるものが追加されたのであります。

この近隣諸国条項により、結果的に、例えば南京大虐殺などの議論の分かれる事件や強制連行従軍慰安婦などの記述が本来記述されるべきかどうか、さらにはまた、その記述のあり方等についても、一方的な立場で無審査で検定を通すことになってしまったのであります。

歴史的事実が確定していないことについてまで、相手から言われると、正確な根拠もないまま何でも受け入れてしまうということでは、むしろ、歴史の真実を基礎とした真の友好関係を諸外国と築くことにはならないと考えるところであります。(発言する者あり)

次に、近隣諸国条項の削除は、アジアの人々との友好関係を阻害するのではないかとの御意見でございましたけれども、自国の歴史、伝統、文化に対する誇りは正しい歴史認識に基づいてつくられるという認識は、そのとおりであると理解しております。

しかし、ある特定のイデオロギーに固執して歴史教科書をつくりかえることは許されないと先ほどおっしゃられましたけれども、それは我が党の長年の主張でありまして、だからこそ、私どもはこの教科書の改訂を求めるわけであります。(発言する者あり)共産党の新野議員からの御指摘とは思いもよらないことでございました。

また、アジアにおける加害者としての歴史的事実と責任を明確にしてこそ、アジアの国々と諸国民との友好と信頼を深め、広げていくことができる、このように指摘されたのでありますが、歴史的事実が確定していないことにまで、正確な根拠のないまま、外国から言われれば何でも受け入れてしまうということでは、むしろ、歴史の真実を基礎とした真の友好と信頼を深め、広げていくということにはならないと考えるところであります。

どうか、これは子供たちの教科書であるということを、いま一度皆様に御認識いただきますようお願いを申し上げまして、答弁とさせていただきます。

(拍手)(発言する者あり)
議長

新野至都子君。

新野議員
(登壇・拍手)(発言する者あり)

教科書検定基準の見直しに関する意見書について再質問をいたします。

歴史的事実に対する認識について再び伺います。

提案者は歴史の重みをどう受けとめておられるのでしょうか。提案者の歴史観は、当時の人たちの思いを考察することが肝要であるとして、現在の価値観に否定的な立場をとっておられるようです。歴史から学ぶという謙虚さが必要ではないでしょうか。

ドイツと同様、我が国においても歴史的事実を正しく伝える必要があるとのお答えですが、それでは伺いますけれども、歴史教科書については、客観的事実に基づきバランスよく記述すべきでありますと答弁されましたが、バランスよくというのはどういうことなのでしょうか。

戦前は、天皇と国家への義務として教育が位置づけられ、「日本ヨイ国キヨイ国、世界ニ一ツノ神ノ国」と教科書で教えた結果が、十五年にも及ぶ太平洋戦争の悲劇でした。

この反省のもとで、一九四八年六月、衆参両院で教育勅語の排除、失効確認決議がなされ、憲法と教育基本法のもとで、国民主権、人権が据えられ、教育も、国家への義務ではなく、一人一人が人間として生きていくための基本的権利として位置づけられたのです。あなたは、皇国史観、皇民教育に固執するごく一部の人々を除いて、国民の総意として戦後教育がスタートしたということをお認めにならないのでしょうか。

提案者は、別の考えもあったと言っていますが、戦前と戦後の区別をつけない皇国史観もバランスよく記述すべきだというのでしょうか、伺います。(発言する者あり)

自虐的・反日的記述の具体例を、南京大虐殺、従軍慰安婦、東南アジアの中学生が学ぶ日本の侵略を挙げ、事実はない、日本たたきとお答えになりました。しかし、これらは紛れもない歴史的事実です。

例えば、従軍慰安婦の問題について、一九九三年、当時の河野洋平官房長官が、調査結果に基づいて、慰安所は当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安婦の募集については本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、慰安所における生活は強制的な状況のもとでの痛ましいものであったという談話を発表いたしました。

旧日本軍が朝鮮を完全な植民地下に置き、大陸に向けた橋頭堡として位置づけ、中国各地で蛮行の限りを尽くした事実を覆い隠すことはできないのです。

提案者は、ドイツの例を避けて答えておられますが、同じ敗戦国であるドイツの姿勢は教訓的です。ワイツゼッカー元大統領は、「若い人たちに、かつて起こったことの責任はありません。しかし、その後の歴史の中で、そうした出来事から生じてきたことに対しての責任があります」と述べています。

今月の初めに、花岡事件を知らなかったという二十二歳の専門学校生の投書が載っておりました。

投書には、

「花岡事件、和解へ」の報道で初めて事件のことを知りました。 太平洋戦争中、強制連行されて秋田県の花岡鉱山で働かされた中国人労働者が、過酷な労働や虐待に耐えかねて決起し、多くの犠牲者が出た花岡事件をめぐり、元労働者側と当時の使用者だった大手ゼネコンの鹿島が和解する とのことでした。

私は、この報道で初めて花岡事件を知り、そしてショックだったのは、これまでこの事件を 知らなかったことです。と言っています。続けて、 学校で教わったことは、「戦争中、多くの外国人が連行され、強制労働をさせられました」。たった、これだけだったと記憶しています。本当に、たったこれだけの授業でよいのでしょうか。

私の周りには今、多くの中国人留学生の友達がいます。私は、この事件のことも知らずに、彼らと接していたのかと思うと恥ずかしくなります。私たちは、自分たちの国がしてきたことも知らずに、この国際社会を歩んでいくのでしょうか。私たちが国際社会で無知を恥じることのない、最低限度の教育が必要なのではないでしょうか。

と投書で言っています。

提案者は、この青年の率直な訴えに答え得る論拠をお持ちなのでしょうか。歴史事実を正確に伝えることが、平和的な国家を形成する主権者を育てるかなめとなるのではありませんか。見解を伺います。

なお、答弁の中で、私のおじいちゃんやひいおじいちゃんもまたこのような悪いことをしてきたのだろうかということになり、日本民族や家族に対する尊敬の念がわかず、一体感も失われるとされていますが、さきの戦争の責任は、おじいちゃんやひいおじいちゃんにあるのではなく、軍の統帥権者であった天皇のもとで、徴兵され、いや応なく戦場に駆り立てられた中での残虐な行為であったものであり、むしろ、おじいちゃんたちは戦争の犠牲者であったことをはっきりさせるためにも、今、歴史の事実を正しく教えることが必要なのです。戦争に駆り立てられた人々に戦争責任を押しつけることは、歴史の本質を見ない責任転嫁です。

提案者は、国権の発動としての戦争責任に対して明確な認識をお持ちではないことを吐露したものであることを最後に指摘しておきます。

(拍手)(発言する者あり)
議長

伊東良孝君。

伊東議員
(登壇・拍手)(発言する者あり)

新野議員から再質問をいただきましたけれども、まず、歴史教科書の記述についてでありますが、どんな歴史的事象にも、いろいろな見方や見解、そしてまた解釈の仕方があると思うのであります。一方のみのとらえ方をもって、それが歴史的事実だと言い切れないものが多数存在することも、これまた事実であります。

先ほど私は、客観的事実に基づきバランスよく記述すべきである、こう申し上げたのでありますけれども、歴史教科書においては、客観的事実に基づき、一方の見方に偏ることなく、もう一方、別な見方も含めて、いろんな見方があること、これらを記述することが、本来のバランスよく記述すること、このように考えております。

また、別の考え方とは、皇国史観のみの考え方を指して言っているわけではありません。

また、次に、歴史的事実を正確に伝えることについてということで、河野洋平元官房長官のお話、あるいは花岡事件の話が出ましたけれども、私どもはこれを否定するつもりはありません。慰安所のことにつきましては、そのとおりであったろうというふうに認識しておりますし、花岡事件につきましても、現在、教科書に載っているところであります。

歴史事実を正確に伝えることが平和的な国家を形成する主権者を育てるかなめとなるとの質問者の主張には、私どもも全く同感でありますし、否定するものではありません。

(発言する者あり)

ただ、残念ながら、今なお世界じゅうの各地において、民族間、あるいは宗教上の違い、あるいは国境等をめぐって、殺し合い、憎しみ合う戦争や紛争が絶え間なく起きているわけであります。まさしく悲しむべき事態が続いているわけであります。

(発言する者あり)

もちろん、だれもが平和を希求しているのは当然でありますけれども、その紛争の当事者は、みずからを正当化し、国民や住民を巻き込んで戦争に駆り立てているわけであります。

例えば、これとて、一概に一方のみが正しいと、このように判断することは私どもはできないわけでありまして、私自身も、もちろん戦争には反対でありますし、だれよりも平和な日本を望んでいるのであります。だからこそ、子供たちにも、国を愛し、人を愛する心の持てる人間に育てたい、平和を希求する国民に育てたい、こう念願しているものであります。

そのためにも、正しい歴史観を持ち、歴史的事実を正確に子供たちに伝えてまいることが極めて重要なことであると私は確信をいたしております。(発言する者あり)

答弁になったかどうかわかりませんけれども、(発言する者あり)皆さんと私どもは、基本的には、子供たちに正しい歴史認識を持ってもらう、そういう教科書を与えたい、こういう一念でございますので、御理解と御賛同をいただきますようお願い申し上げまして、答弁とさせていただきます。

(拍手)(発言する者あり)
議長

以上で通告の質疑は終わりました。これをもって質疑を終結いたします。

お諮りいたします。本件は委員会付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
議長

御異議なしと認めます。よって、本件は委員会付託を省略することに決定いたしました。

議長

これより討論に入ります。 討論の通告がありますので、順次、発言を許します。

伊藤政信君。

伊藤政信議員
(登壇・拍手)(発言する者あり)

私は、民主・道民連合を代表いたしまして、ただいま議題となりました教科書検定基準の見直しに関する意見書に関しまして、反対する立場から討論いたします。

歴史学習の目的は、現在の社会がどのようにして形成されたのか、また、将来どのような社会を築こうとするのかという観点から、自分たちが歴史をつくる主人公であるという自覚を育て、過去から未来への展望を読み取る能力を育成しようとするところにあります。

言うまでもなく、私たちが目指す日本社会は、国民一人一人の人権が尊重されるとともに、アジア諸国の人々と共存できる社会でなければなりません。そのような人権と国際連帯の視点から歴史学習の内容も検討される必要があります。

提案された意見書案では、「検定教科書の記述の一部には、自虐的・反日的な記事があり、子供たちが自国の歴史に誇りを持つことのできない内容になっている」としていますが、さきのアジア・太平洋戦争では、日本の民衆は戦争の被害者であった一方、アジアの民衆に対しては加害者でもありました。

過去の歴史に問いかけて教訓を学ぼうとする真摯な姿勢に対し、自由主義史観の人々は、とかく自虐的とか反日的というレッテルを張って攻撃をいたしますが、これは極めて非歴史的であり、非科学的な態度であります。

また、その行為は、戦争に協力しない人々を非国民と言って迫害した戦前の状況にも通ずるものであります。(発言する者あり)

歴史の教訓は、過去の成功事例からより、むしろ、失敗事例からより多く引き出されるものであります。歴史の真実をしっかり認識し、平和のとうとさと命の大切さを理解することが世界の平和を築いていくことにつながるのであります。

意見書案は、子供たちの愛国心を一層強める教科書をつくるため、教科書検定基準にある近隣諸国条項の削除を求めるとしておりますが、これは暴論であります。

近隣諸国条項は、日本によるアジア諸国への過去の侵略の事実を進出という記述にすりかえた、当時の教科書検定結果に、中国、韓国を初めとしたアジア諸国から厳しい批判が巻き起こり、その関係修復に向けた取り組みとして、一九八二年にあえて規定されたものであります。

当時、この問題の関係修復に向けて、自民党の森喜朗現総裁も韓国に出向き、釈明に努めたところであります。

また、最近では、昨年の国旗国歌法審議の過程で自民党の野中広務元官房長官が、中国や韓国など近隣諸国との近現代史の認識に違いがあってはアジアのパートナーとしてやっていけるのかどうか大きな危惧を感じるとの認識を示しているところであります。

今、韓国の若者の間では、過去の歴史の事実を踏まえながら、それを乗り超えて日韓の交流を求める動きが急速に高まっています。韓国の若者は日本の植民地時代の歴史を詳しく学んでいます。歴史的事実に意図的に目を伏せさせたままでは、真の交流は生まれようはずがありません。

いずれにせよ、近隣諸国条項は、我が国の人々がアジア諸国の人々と共存社会を築く上での礎とも言える極めて大切な条項であり、断固堅持すべきものでこそあれ、削除すべきものでは決してないのであります。

この意見案が仮にも採択されるようなことは、まさに道議会としての見識が内外に大きく問われることにつながりかねません。

以上、意見案に対する私の反対意見を申し上げ、議員各位の良識に期待し、討論を終わります。

(拍手)(発言する者あり)
議長

大橋晃君。

大橋晃議員
(登壇・拍手)(発言する者あり)

私は、日本共産党を代表して、意見案第三号に対する反対討論を行います。

まず、提案者が自虐的・反日的な例として引用した教育出版社の中学の歴史教科書ですが、ここに実物があります。私も、これを熟読させていただきました。提出者が引用したように、南京大虐殺あるいは慰安婦の問題、三光作戦等について記述されております

私は、これを見たときに、国際的には既に定着し、国内でも、一部の人を除けば当たり前な事実として定着している問題が書かれている、こういうごく普通の教科書であるというふうに考えるものであります。(発言する者あり)

南京大虐殺については、極東国際軍事裁判を挙げるまでもなく、既にこの事実については明らかになっております。また、中国側だけではなく、日本のこれに携わった当事者からの生々しい証言もたくさん出されております。時間の関係で一つだけ紹介します。

そのときの作戦に従事した東史郎さんという方は、「南京を占領してから四十数日後の一月二十三日のことですが、揚子江には死体がたくさん浮いていました。また、ベニヤ板製のボートの上に五人の兵士が乗っていて、先にカギのついている三メートルぐらいの棒で、死体を沖に流していました。一人の兵士に「何をしているのか」と聞くと、「トラックで運んできた捕虜を、ここでつき落として、ズドンズドンと撃ち殺すのがオレの役目」と言っていました。」と。(発言する者あり)

その他、たくさんの証言があります。三光作戦についても全く同じであります。また、従軍慰安婦の問題につきましても、今、従軍慰安婦の当事者の方々が裁判を起こしていますしかし、残念ながら、その多くは敗訴しております。なぜ敗訴しているか。それは、二十年以上経過しているので、裁判そのものが成り立たない、こういった理由がほとんどであります。この訴えている事実そのものについての明確な反証、あるいは、これを否定する判例は出ていないのであります。

戦時下のことですから、例えば、その数に一定の幅があったり、また、意図的にこういった証拠書類が隠滅されているために個別的に十分な立証ができないものがあったとしても、そのことをもって、その事実を消し去ることはできません。まして、これを自虐的・反日的などというのは、提出者は、過去に目を閉ざすことでも、事実をねじ曲げることでもないとは言っていますが、客観的には、事実から目をそらすと言っていることにほかなりません。

(発言する者あり)

ドイツでも、アウシュビッツは事実無根のでっち上げだと言っている、ごくごく一部の人がいます。提出者の主張はこれとどれだけ違うというのでしょうか。

教科書の検定ということで言えば、学者が学問的到達点をもってつくった教科書を文部省が書きかえさせる検定制度そのものが問題なのです。(発言する者あり)

提出者は、近隣諸国条項が一方的な外圧に屈したものと言いたいようでありますけれども、検定制度が、あの家永三郎元東京教育大学教授の三十年余にわたる、いわゆる家永教科書裁判など、多くの人々の努力によって文部省自身が手直しを余儀なくされてきたことが背景にあります。

最近では、自民党内部にも検定制度を廃止せよという一部の意見が出されているのは、自民党の皆さんも御存じだと思います。問題にすべきは、近隣諸国条項ではなくて、検定制度そのものなのであります。

ついでに付言しますと、これらの一連の事柄は、すべて自民党政府及び自民党政府の文部省が行ってきたことであります。まさに「天に唾す」とはこのことであります。(発言する者あり)

道民にはなじみの深い、中国から強制連行されて北海道の炭鉱で働かされ、一九五八年まで道内を逃げ回っていたあの劉連仁さんがことしの九月に亡くなられました。 劉連仁さんが九六年の七月に東京地裁の陳述の中で次のように述べています。

「私の経歴はすでに歴史になりましたが、歴史を忘れてはいけません。被害者は忘れてはいけませんが、加害者はもっと忘れてはいけません。歴史の教訓を汲み取り、前の間違いを真心をもって改めて、真の歴史の事実を尊重し、解決することから、中日関係は初めて確実に、発展的に、子々孫々まで続けられるものであり、そして国際社会に貢献できるのです。」

二十一世紀を目前にした今、二十世紀を生きてきた私たちの世代がなすべきことは、二十世紀の正の遺産にも、そして負の遺産にもしっかりと目を向けること、そして二十一世紀の国際社会を担う私たちの子供たちにこれをしっかりと伝えていくことです。この点で歴史教科書の果たす役割は極めて大きなものがあります。

提出者が言うこのような提案によっては、ますますねじ曲げた教科書が誕生することに露払いをするだけの役割であります。

道議会史上に汚点を残しかねないような本意見案には、議員各位のきっぱりとした反対の意思表示をお願いして、私の討論を終わります。

(拍手)(発言する者あり)
議長

以上で通告の討論は終わりました。これをもって討論を終結いたします。

これより採決いたします。この採決は起立によります。本件を原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。

(「賛成」「反対」と呼ぶ者あり)
議長

起立多数であります。

(拍手)

よって、本件は原案のとおり可決されました。


発言者略歴

議員名簿より。

伊東 良孝 (いとう よしたか )
釧路市選出
自民党・道民会議
当選2回
環境生活委員
産炭地域振興対策特別委員
E-mail:yoshita@ta2.so-net.ne.jp
新野 至都子(にいの しずこ )
札幌市北区選出
日本共産党
当選1回
文教委員
少子・高齢社会対策特別委員
伊藤 政信(いとう まさのぶ)
札幌市厚別区選出
民主・道民連合
当選3回
総務委員
総合開発調査特別委員
URL:http://www.itomasanobu.com
E-mail:INFO@itomasanobu.com
大橋 晃(おおはし あきら)
札幌市東区選出
日本共産党
当選5回
総務委員
地方分権・構造改革問題調査特別委員長
E-mail:ohashi-1940@nifty.com

作成 : rain